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珪藻フコキサンチン?クロロフィル結合タンパク質の凝集体の 励起エネルギー消光機構の解明

2025/04/01
プレスリリース

【研究のポイント】

珪藻Phaeodactylum tricornutum由来のフコキサンチン?クロロフィル結合タンパク質(FCP)を精製し、凝集状態における励起エネルギー消光メカニズムを解明しました。
凝集状態のFCPは、励起エネルギー消光を促進し、蛍光量子収率が大幅に低下することを示しました。
時間分解蛍光解析により、励起エネルギー消光がクロロフィル間およびクロロフィル–カロテノイド間の相互作用の変化に起因することを明らかにしました。

【研究概要】

静岡大学の長尾遼准教授の研究グループは、珪藻(注1)Phaeodactylum tricornutum由来のフコキサンチン?クロロフィル結合タンパク質(FCP)(注2)を精製し、その凝集状態における励起エネルギー消光のメカニズムを解明しました。
本研究では、FCPの凝集により励起エネルギー消光が顕著にみられ、蛍光量子収率が未処理FCPの37.6%から凝集FCPでは4.8%へと低下することを確認しました。
また、励起エネルギー移動と消光プロセスを詳細に調べるために、時間分解蛍光解析を行いました。
その結果、凝集FCPでは310psおよび1.6nsの時間定数を持つ蛍光減衰成分が観測され、これが励起エネルギー消光の主な時間スケールであることが示されました。
さらに、FCPの凝集に伴い蛍光スペクトルが長波長シフトし、バンドが拡張することも確認され、これらの現象は植物のLHC凝集体と類似した性質を示すことが明らかになりました。
本研究は、珪藻FCPの励起エネルギー制御メカニズムを理解する上で重要な知見を提供し、光合成システムのエネルギー調節機構の解明に貢献するものです。

なお、本研究結果は2025年3月29日に「The Journal of Physical Chemistry B」に掲載されました。


【研究者コメント】

静岡大学農学部 准教授?長尾 遼(ながお りょう)

本研究では、珪藻FCPの凝集に伴う励起エネルギー消光の詳細なメカニズムを解明しました。
特に、絶対蛍光分光法と時間分解蛍光解析を組み合わせることで、消光に関与する時間スケールを特定し、植物LHCとの共通点を明らかにしました。
今後、この知見をもとに、光合成におけるエネルギー制御の進化的多様性をさらに探求していきたいと考えています。


【研究背景】

酸素発生型光合成(注3)は、太陽光を利用して水と二酸化炭素から有機物と酸素を合成するプロセスであり、地球上の生命維持に不可欠な役割を果たします。
この光合成には、光化学系I(PSI)(注4)および光化学系II(PSII)(注4)が関与し、光エネルギーを化学エネルギーに変換します。
光化学系には、光を集めてエネルギーを伝達する集光性色素タンパク質(LHC)(注5)が結合しており、その多様性は生物の進化や生息環境への適応に大きく関与しています。

光合成生物は、刻々と変化する光環境に適応するために、光捕集と光防御のバランスを調節する高度な機構を進化させてきました。
特に、陸上植物LHCの凝集と励起エネルギー消光は、強光ストレス下での光損傷を防ぎつつ、低光量の環境では効率的なエネルギー捕集を維持するための適応戦略として機能することが知られています。

珪藻は、紅藻を祖先にもつ光合成生物であり、LHCとしてFCPを持つことが特徴です。
FCPは、光合成におけるエネルギー捕集およびエネルギー消光に重要な役割を果たします。
特に、FCPが凝集すると励起エネルギー消光が促進されることが示唆されていました。
しかし、どのくらいのエネルギー消光が生じるのか、また、減少した成分がどのくらいの時間で生じるのか、その詳細なメカニズムは不明でした。


【研究の成果】

本研究では、P. tricornutum から精製したFCPを凝集させ(図Aの赤矢印)、励起エネルギー消光の詳細な解析を行いました。
その結果、以下の知見を得ました。

1.FCPの凝集による励起エネルギー消光の定量的評価
絶対蛍光分光法を用いて、FCPの蛍光量子収率を測定した結果、未処理FCP(図Bの黒線)では37.6%だったが、凝集FCP(図Bの赤線)では4.8%まで減少することを確認しました。

2.消光過程の解明
凝集FCPの時間分解蛍光解析を行った結果、310 psおよび1.6 nsの時間定数を持つ消光成分が観測され、これが励起エネルギー消光に関与していることを示しました。

3.光合成系におけるエネルギー調節機構の進化的意義
植物のLHCが凝集によって消光を引き起こすのと同様に、珪藻FCPにおいても同様のメカニズムが働いていることが示されました。これは、LHCとFCPが共通のエネルギー調節機構を進化的に保持している可能性を示唆します。

本研究の成果は、光合成系における励起エネルギーの調節機構を分子レベルで理解する上で重要な知見を提供し、今後の光合成研究に新たな展開をもたらすことが期待されます。


【論文情報】

掲載誌名:The Journal of Physical Chemistry B
論文タイトル:Aggregation-Induced Excitation-Energy Quenching in Fucoxanthin Chlorophyll a/c-Binding Proteins from the Diatom Phaeodactylum tricornutum
著者:Yoshifumi Ueno, Ou-Yang, Li, Jian-Ren Shen, Tatsuya Tomo, Seiji Akimoto, Ryo Nagao
DOI:https://doi.org/10.1021/acs.jpcb.4c06894


【用語説明】

注1:珪藻d

植物プランクトンの一種であり、単細胞の真核光合成藻類です。細胞が珪酸質の硬い殻に覆われているのが特徴です。

注2:フコキサンチンクロロフィル結合タンパク質(FCP)
珪藻と褐藻に特有の集光性色素タンパク質です。クロロフィルcおよびフコキサンチンと呼ばれる色素を結合します。これらは陸上植物には存在しない色素分子であり、珪藻が褐色を呈する要因です。

注3:酸素発生型光合成
光合成には酸素発生型光合成と酸素非発生型光合成があります。
酸素発生型光合成は、光化学系I、シトクロムb6f、光化学系II、ATP合成酵素と呼ばれるそれぞれの膜タンパク質複合体によって駆動され、光エネルギーを利用して水と二酸化炭素から炭水化物と酸素を合成します。
酸素非発生型光合成生物が進化して酸素発生型光合成生物になったと考えられています。

注4:光化学系I(PSI)、光化学系II(PSII)
光エネルギーを化学エネルギーへ変換する膜タンパク質複合体です。
10~25種類程度のサブユニットから構成され、補欠因子として、金属錯体、色素分子(クロロフィルやカロテノイド)、キノン、脂質がタンパク質に結合しています。
クロロフィルとカロテノイドはそれぞれ特有の光エネルギー吸収帯を持ち、光捕集に重要な役割を担います。

注5:集光性色素タンパク質(LHC)
酸素発生型光合成を行う生物で光エネルギーを捕捉し、光化学系へ効率的に伝達する役割を担うタンパク質群です。
LHCは光合成の初期過程において、太陽光を利用可能な化学エネルギーに変換するための重要な要素であり、その多様性と進化は、光環境への適応や光合成効率の向上に寄与しています。

問い合わせ先:

【研究に関すること】
静岡大学農学部 准教授
長尾 遼(ながお りょう)
TEL:054-238-4251
E-mail:nagao.ryo[at]shizuoka.ac.jp
WEBサイトやSNSのリンクのまとめ:https://linktr.ee/ryonag

【報道に関すること】
静岡大学 広報?基金課
TEL:054-238-5179
E-mail:koho_all[at]adb.shizuoka.ac.jp

※全て@を[at]に変更してご利用ください。